「列に並ばない」中国人を理解するために。イメージ転換のとき(2)(馬 英華の日経新聞電子版ビジネスリーダー記事)

(馬 英華氏の経営者ブログ 2016年1月1日版)

東京エレベーター馬英華の写真あけましておめでとうございます。

新たな年の始まりにふさわしいトピックとして、日中の人たちがよりよい関係を築いていかれるヒントを考えました。取引先や、提携相手の中国企業とうまくいかないと悩んでいる人、爆買いにみられる中国人の行動がおかしいと思っている人に、相互理解の一歩になってもらえるとうれしいです。

爆買いはあと2年

日本へ買い物に訪れる中国人は増え続け、日用品や日本ブランドの家電をたくさん買っています。売り上げが急増している小売業界はうれしい悲鳴を上げていることでしょう。中国人による「爆買い」は去年12月に流行語大賞にも選ばれました。

でも、私はこのトレンドはそう長く続かないと思います。せいぜいあと2年くらいではないでしょうか。なぜなら中国の国内で、もうすぐこうした商品のかなりの部分は買えるようになるからです。

私は弁護士としても仕事をしていますが、最近、中国で売りたいという日本企業からの相談が多くなってきました。豊かになり、購買力が上がっている中国の消費者に向けて、どんどん日本企業が進出し、同じ品質の日本ブランドの製品を供給するようになれば、中国人はわざわざ日本に行く必要がなくなります。富士山を見たいとか、温泉に入りたいといった、日本しかないものを見て、体験するという目的に落ち着くことになるでしょう。便座を買ってよっこらしょと持って帰る人もそのうち見なくなるかもしれません。

とはいえ現状は、中国からの訪日客の一部は、日本の人々からみれば眉をひそめるような行動に出ています。テレビやインターネットで話題になっている、街中や駅で列に並ばない行為は、笑いの種になっているようにも思います。我先にと買おうとしたり、電車に乗り込もうとしたりする中国人のイメージは有名のようです。なぜ中国人はそのようなことをするのだと思われますか。

上に行くための戦い

前に故郷に帰った際、道端で果物を売って行商している人に目が留まりました。見覚えがあると思ったら、小・中学校で一緒だった同級生でした。

中国は激しい競争社会です。私が中学、高校を過ごしたころは、学校数がまず少なかったうえ、高校ともなると進学率のいい学校は数百キロも家から離れたところにしかないというように、選択肢がほとんどありませんでした。試験に失敗したときに選択肢になりうるような専門学校や職業校もなかった。いい学校に行かなければ、いい職に就くことの可能性が非常に低くなります。競争に負ければ、いやでも現状の生活にとどまるしかないのです。

いまだに覚えているのが、私が最初に行った中学校です。なぜか分かりませんが、当時私は暗記がとても得意で、漢詩をそらんじたり、物理の方程式をきちんと応用できたりが難なくできたため、試験の成績がずば抜けて良かったのです。先生たちから褒められるというより、「こんなできるなんておかしい」という目で見られ、つらい思いをしました。

一度、物理の試験で私一人しか解答できなかったことがあり、教科書を盗み見したのではないかと疑われたようで、再試験を受けさせられたことがありました。試験時間中、先生は私ばかりを見回ります。田舎の学校で床は板張り。先生のはいていた硬い靴がカツッ、カツッと床を打ち、その音がうるさくて集中できませんでした。それでも試験結果はとても良好でした。カンニングではありませんから…。

この学校からは一人も高校へ進学した生徒がいませんでした。その理由が腑(ふ)に落ちました。「こんな先生の下では私の能力は伸ばせない」と見切り、母親に「転校したい」と泣いて訴え、別の中学校へ行くことにしたのです。2番目の中学校へは、砂利道を一日5時間かけて自転車で通いました。これが中学生だった私の、上に行くための戦いの始まりだったのです。

事業をふいにしないために

競争なら当然、人を出し抜こうとする考えがあることは否めません。ビジネス上ではそう思っていた方が無難です。

中国進出を考える日本企業が増えてきたと前述しましたが、その際に驚いてしまうのは、あまり調査もせずに事業を急ぐ日本企業があることです。

例えば「5億円の予算でこういう事業を実現したい」と相談を受けることがあります。そこで提携先として検討している中国企業の詳細を聞くと、ほとんど実態を分かっていないのです。「あちらの○○社長が案内してくれた、ちゃんとした会社だった」と言われても、私にはとても危なっかしく感じられます。その社長は本物ではない可能性があるし、案内してもらった工場などは、その会社の所有ではないかもしれません。信頼できる機関に調査依頼をすれば分かることを、調査費を惜しんで――100万円や200万円かければしっかりした結果を期待できます――その5億円をふいにしてしまう。これも、中国の競争社会という文化を理解していれば防げるはずです。


列に並ばないのは、競争という文化に根差した行為で、それになじんでいるからです。先に行く、上へ行くための、生き残りをかけた文化なのです。いい、悪いではなく、「文化が違う」という前提を踏まえて付き合うのがとても大事だと思います。イメージだけで判断するのはとても残念ですし、双方のためにならないのではないでしょうか。

もしあなたの同僚の中や近所に中国人がいれば、その人たちの多くは激しい競争を勝ち抜き、夢や目標を持って日本に来て暮らしているのだと思います。彼らと、じっくり夢や目標について、語ってみてはいかがでしょうか。

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